歩きながらお酒を飲む最高に健全で不健全なカルチャー、「歩飲」。一人でそっと楽しむのもいいが、誰かと一緒にやるのもまた格別。
だったらハードコアのシンガロングのように、歩飲もALONG（アロング）してみようじゃないか。
──そんなわけで歩飲ALONG第2回はもはや準レギュラー？の丹下氏と代田橋、笹塚エリアを歩飲する。
写真・インタビュー：外山鉛
外山鉛（以下「鉛」）
じゃ、自己紹介を簡単に。
丹下輝一朗（以下「丹下」）
PROMというバンドとソロでmorphという活動をしている丹下です。
鉛
私らのなれそめを。どういうきっかけで知り合ったんだっけ？
丹下
メンボ（バンドメンバー募集サイト）で多分連絡してるんじゃない？
鉛
だよね。
丹下
OURSOUNDSでしょ？
鉛
あーOURSOUNDSだ。懐かしい。俺がギターを募集してたのか。確か沈む鉛にギターを入れようとしてた時代に。
丹下
10年前ぐらいだよね？
鉛
そういわれてみればそんな経つね。それででも、結局スタジオ入らず。
丹下
そうだね。
鉛
それで俺もギターを入れることを諦めたんだ。その後多分西荻FLATでライブして打ち上げでどっか居酒屋行こうとしたときにたまたま居合わせて。
丹下
それで、あれか。
鉛
そう、メンボの人ですよね、みたいな初めましての挨拶をしたんだ。で、俺はそのあとPROMを改めてちゃんと観に行った。鶯谷What’s Upだかどこだかちょっと覚えてないけど。
丹下
そう、そのときもうちょいしっかり話したのか。
鉛
で、好きな音楽とカルチャーとか趣味が合うというのでちょくちょく会うようになる、みたいな。
丹下
沈む鉛のライブを観たのはそれから結構期間が空いていた気がする。
鉛
うん、多分ね。
丹下
企画出てもらったときとかかなあ観たの。
鉛
それでちゃんと観てもらったかもしれない。
下北沢に住んでわかったけど、下北沢で活動してる人って下北沢に住んでない。
鉛
なんで代田橋に住もうと思ったんですか。
丹下
俺まだPROM活動休止前のときにメンバーみんな下北沢住んでて、自分としても活動するなら下北沢周辺の方がいいだろうなって思って住んでた。
鉛
なるほど。
丹下
高円寺とか西荻とかで活動してる人ってその街に住んでる人が多いんだよね。でも下北沢に住んでわかったけど、下北沢で活動してる人って下北沢に住んでない。
鉛
そうなんだ。
丹下
西荻から下北に引っ越す際に急に決めたアパートが18平米の木造で全9部屋だったんだけど、俺は202号室(すべての中心の部屋)で。隣の音が漏れまくり壁ドンされまくりで。もうここは住む場所じゃないっていうか。ほんとにもう無理だなこれってなったときに、近場で引っ越しを考えた。最初は経堂とかも見たんだけどね。
鉛
うーん、住むには良さそうな街だよね。
丹下
今の間取りぐらいで探してたんだけど、（代田橋の今住んでいる家より）もうちょい家賃高いくらい。
鉛
じゃあそこまで何か理由があったわけではなく、とりあえず下北沢を出て近辺でちょうどいい家ないかなって探したら、代田橋がたまたま条件に合った？
丹下
あと下北沢に住んで1年も経たないぐらいに引っ越した。
鉛
そうなんだ。
丹下
下北沢ってカルチャー人多いじゃん。引っ越したてはコロナとかあって寂しくてしょうがなかったから、だいぶ助けてもらってた。知り合いが歩いてすぐエンカウントしてしまうのは……良くも悪くも……だったかも。無理して饒舌気取ってみたりして、でも無理してて。
鉛
なるほど。それは疲れるかも。
丹下
で、なんかそのときの自分は「人とうまくやらなきゃいけない」みたいな強迫観念があり（笑）。
鉛
完全にオフにできないみたいな。
丹下
そうオフにできない。だからそういうカルチャー色がない街を探していた。
鉛
なるほど。
──橋を見つける
丹下
そう、これなんか。
鉛
すごい！こんなになってたのここ？
丹下
そう。でも代田橋の撮れ高この橋くらいだなぁ。
鉛
え、これがこの街のピーク（笑）！？
丹下
あと俺、なんだかんだ地元近いから。中学校のときの友達とかも皆ここで遊んだりとかしてたかな。
鉛
そうか。じゃあ、元々知ってる土地だったんだ。
丹下
そうだね、それもあるかな。
鉛
なるほどね。
丹下
あと俺が中学のときにそっち（橋桁）の奥にホームレス住んでて。ただ、そのホームレスのおっさんがすごいフレンドリーにお菓子とかくれてて。で、ザリガニ釣りに来てたのよもともとここに。
鉛
あーザリガニ釣りね。
丹下
そう、ちっちゃい頃から来てたんだけど。なんかそのホームレスのおっさんが来てから釣らなかったの、そのおっさんいるし。でもおっさんフレンドリーだし相変わらずお菓子とかくれるしでたまに行ってた。
鉛
ほうほう。
丹下
ある日、中学校のときの友達とかと冷やかしじゃないけど、ホームレスのおっさん会いに行こうみたいになって。で行ったらおっさん居なくて。
鉛
ええー。
丹下
荷物とか置いてあったんだけど。
鉛
そうなんだ。
丹下
で、奥の方見たら大量のザリガニの殻が置いてあって。
鉛
うわー……
丹下
多分そこの川のザリガニ全部ホームレスのおっさんが食ってた（笑）。
鉛&丹下
（爆笑）
丹下
すごい怖くて震えた。
鉛
ちょっと怖い。
丹下
めちゃくちゃ怖かったね。
鉛
ザリガニ食ってたんだ。
丹下
そうザリガニ食ってなんとか凌いでたんだと思う。
鉛
なのに、お菓子はくれるという。
丹下
そう、お菓子くれんの。
鉛
すごいね。見栄を張ってたのか。自分の食費を切り詰めてでも、子供たちにお菓子をあげたいと。めっちゃいいおじさんじゃん。
丹下
そうそう。
鉛
じゃ、そういう思いでもありつつみたいな。
酒って感じではない。ここ最近とかは酒飲んでるけど（この街は）あんまり酒とは結びつかないかな。
鉛
代田橋の第1印象はどんな感じ？
丹下
うーん……特にないかなぁ。
鉛
そっか、第1印象っていわれても幼少期の頃から知っている街だから別にこれといってなんかない感じか。
丹下
ただ、やっぱり引っ越ししてみて思うのは。
鉛
そうだね。住んでみての印象はどうなの実際。
丹下
下北沢で散々浴びてたカルチャーみたいなのがやっぱりない。真逆って感じがしていい。カルチャーしまくってる人も多分そんなにいなそう。
鉛
なるほど。
丹下
でいざ住んでみると、子供の頃に来て代田橋で友達と遊んだりしてたときのことちょっと思い出したんだけど。
鉛
はいはい。
丹下
あ、この街ってなんもなかったわ、みたいな。ほんとになんか全然なんもないっていう感じだった。で、引っ越したのがちょうどコロナの１番最後の波みたいなときで、誰にも気軽に会えない感じがしてて人肌恋しさは正直あった。
鉛
そうなんだ。あの頃は確かにどこもそんな感じだったよね。
丹下
そのときは代田橋に友達とかも居ないしね。コロナ禍でもなんとか営業続けてる居酒屋とかには行ってみたりしたんだけど。すごいちっちゃい路地裏にあるような居酒屋ね。でもやっぱり代田橋は代田橋で昔からいるお客さんが牛耳ってるというか。趣味とか気持ち的な部分が合う人っていうのはもういないなっていう印象だった。
鉛
なるほど。
丹下
そうだから、別にいいけどほんとなんもないなここっていう印象。
鉛
そういう感じだったんだ。
鉛
だから代田橋とかも幼少期から馴染みがあったと。
丹下
そう、近かった。
鉛
そうなのね。
丹下
ここに一応メッカっていう居酒屋がある。
鉛
おー酒飲めないはずなのに、イスラム教は。
丹下
メッカの隣に笹塚キリスト教会あるのおかしいよね。
鉛
やばいじゃん。え、これおもしろい。
鉛
子供の時はどこら辺で遊ぶもんなの。世田谷出身で学校終わって放課後みんなで何して遊ぶ？ってなったらどこら辺のエリアで何して遊んでたの？
丹下
あーだいたい羽根木公園とか、小学校のときとかは本当に鬼ごっことかオールドスクール遊びをしてた（笑）。
鉛
ああ、オールドスクールだね（笑）。
丹下
中学校とか入って、やっぱスケボーとかし始めたし。
鉛
代々木公園とか？
丹下
そう、代々木公園までプッシュ（スケボーで地面を漕いで移動すること）で行ったりとか。
鉛
あんまりなんか東京出身の人の幼少のころの遊びがイメージつかなくて。
丹下
逆に鉛くんはどうしてたの？
鉛
うちはそもそも放課後も校庭が使えるからグラウンドで野球やサッカーとかした。
丹下
そっかそっか。じゃあ、わざわざその場所を移したりはしない？
鉛
場所を移したりもしたけど。一旦家に帰って、また学校のグラウンド集合とか。あと、家の近所の公園とかでサッカーっぽいことしたりとか。外で遊ぶんならそういう感じかな。
だって六本木出身の人とか、六本木の交差点で鬼ごっことかしてたって言うじゃん。東京だなって。でも、そうだよな。地元のエリアで鬼ごっこするってなったら、そりゃ六本木出身の人はそうなるのかと。
丹下
まあ、そうだね。だから、みんなそれぞれ地形を生かして遊びをしていたんだろうね。
鉛
野球とかする場所あったの？ボール禁止ではなかった？
丹下
一応できるというか野球はダメだけどキャッチボールとかはOKだった。でも、正直、小学生のとき俺めっちゃ太ってたのよ。
鉛
そうなんだ、へえ。
丹下
だからなんとなく男の子スポーツやんなきゃみたいな風潮あるじゃん。それで俺、本当に嫌なんだけどバスケ部入れられて。
鉛
はいはいはい。
丹下
ほんとに嫌すぎて仮病とか使ってサボってた。そのときに小4ぐらいで、成長痛で足がすげえ痛くてなってバスケこれできないってなって、もうラッキーと思ってた。
鉛
じゃああんまりアクティブに外で遊ばなかった？
丹下
マジでずっとゲームやってた。
鉛
そういう感じなんだ。
丹下
ゲームやってて、毎週日曜家族で、今は無くなってるけど明大前のガストでメシ食ってたんだよね。当時小学生でツインハンバーグラージってやつ頼んでご飯3杯おかわりして、ドリンクバーもジュース全部混ぜてたりしてたから、然るべくして太った（笑）。
鉛
えー。それ肥満児認定されなかった？
丹下
認定はされてたね。
鉛
手紙来るよね。あなたは肥満児ですって（笑）。
丹下
だから親父がもうさすがになんか成長痛とかはわかるけど、運動しろって言われて。で、一応矯正サポーターをつけたまま行かされて。
鉛
星飛雄馬の（笑）？
丹下
え、あれじゃない（笑）。なんだっけあれ、ピッチングフォーム強制マシンみたいな名前だよね。いやでももう父親には本気で怒られてた。このままじゃお前さすがにまずいぞと。男の子なんだからみたいな。
鉛
今も肥満児認定とかあんのかね、このルッキズムの時代に。
丹下
（笑）。
鉛
ゲームは何してたの。ニンテンドー64とか？
丹下
いや、やってはいたけどなんだったっけなあ……
鉛
でも世代的に全てのハード機があった世代だよね。ファミコン、スーファミ、プレステ、64で、ちょっとしたらゲームキューブの世代じゃん、俺らって。
丹下
俺はそれでいうとスーファミだったね。親父が結構小学生のとき厳しいっつうか怖くて。
鉛
ほうほう。
丹下
ゲームを全クリしたら買ってくれるルールだったから。
鉛
ああ、そうなんだ。
丹下
ドンキーシリーズとか俺多分すげえ集中してクリアしてる。
鉛
ちなみにアルコール何パーの街ですか。この街をアルコールのパーセンテージとか度数に表すと。
丹下
パーセンテージかぁ。茶割り程度だから4パーかなぁ。
鉛
なるほどね。4パーかぁ。あんまりアルコール度数の高くない街なのか。
丹下
あんまりカッチカチじゃないね。
鉛
固くはないのか。
丹下
酒って感じではない。ここ最近とかは酒飲んでるけど（この街は）あんまり酒とは結びつかないかな。
鉛
なるほどね。ちょっとそろそろトイレいきたいね。
丹下
あ、すぐそこの駅前にフリートイレがある。
鉛
フリートイレ！やっぱトイレスポットは大事ですね、歩飲するには。
丹下
そうそう、俺もかなりトイレ近いから友達と歩飲するときは未知のところには行かないかな。
後編へ続く。
丹下氏の歩飲インタビューはこちら
