歩きながら飲む最高に健全で不健全なカルチャー、歩飲を誰かと一緒にやる企画「歩飲ALONG」。
初回はTOSHIKI KUMAZAWA(HYPNOTIC VOID.)と一緒に行った。こちらその後編。
前編はこちら

歩飲ALONG Vol.1 with TOSHIKI KUMAZAWA(HYPNOTIC VOID.) - 前編 -
クマ
いいっすね、ローカル感が。この焼肉屋も地元の人がいくんですかね?
鉛
ああ、いいですね。
クマ
値段がちょっとわかんないですけど。大事なところは全部削れてる。
鉛
0円しか残ってない。すごい。
クマ
(店前にある植木鉢の)お花も元気なんで現役感ありますね。
鉛
現役かもですねこれは。あ、でも一見(いちげん)に厳しいタイプかもしんないですね。
クマ
(被せるように)そんなことないですよ!!
鉛
あぶねえ、人いた(おそらくこのお店のおばあちゃん)。危なかったぁ……なんか下手に地元の居酒屋行ってもね、怖いっすよね。「何しに来たの?」みたいな空気出されたりするじゃないですか。あんま経験はないけど。
クマ
僕は逆にもう諦めて飲みに来たんですけど、みたいな態度でいますね。
鉛
なるほどね。あーここで行き止まり。うん、やっぱ基本的に何もないですね。何もない。
クマ
歩飲し放題です。コンビニもなくなってきましたね。僕そろそろガソリン(酒)が欲しくなってきましたね。
鉛
どうだろう、大通り沿いを頑張って歩けばコンビニ1軒ぐらいはあるかもしれないっすね。
自分的には重要なこと
どうせ死ぬって考えて生きてると、やっぱりなんか嫌なことやってる暇ないなって。
鉛
自分的には超重要なことってありますか。他人から見たらどうでもいいって思われるかもしんないけど。
クマ
それは歩飲のことですか。別にそういうことじゃなく?
鉛
歩飲関係なく。
クマ
他人からしたらどうでもいいけど、僕はこだわってるみたいな?
鉛
そうです。
クマ
なんかね、いろんな意見がありますよね。僕はそうしてるだけで他人に強制しないんですけど、ほんとに嫌なことは全くしない。
鉛
なるほど。
クマ
マジでこの人嫌だなと思ったら話さないし。仕事中は我慢してますけど、仕事以外ではほんとに嫌なこともしないです。仕事もなんかマジ子持ちだから色々考えなきゃいけないですけど、この職場やだなとか、人間関係が嫌な感じになったら速攻で辞めてきた人生なんで。
鉛
なるほど。
クマ
ストレスを極力感じないように生きていきたい。
鉛
あー。でも大事っちゃ大事っすね。
クマ
ちょっとね、前に鉛さんとも話したんすけど、別にそんなにめちゃくちゃ稼ぎたいわけじゃなくて、最低限稼げればいいと思ってる人生なんで、特にそんな欲しいものもないし。
鉛
うんうんうん。
クマ
欲しいものを得るために何か犠牲を得るよりは、手に届く範囲で満足できる価値観を保ちたい。
鉛
はいはいはい。
クマ
そうしたら結構どんな場所でも生きていける。
クマ
なんか25からそういう考えで生きて来てて。ていうのもちょっとヘビーな話になるんですけど、中学生の時に姉が亡くなってて。
鉛
そうだったんすね。えー。
クマ
おじいちゃんも亡くなって。
鉛
はいはいはい。
クマ
中2、3って、まだなんか自分って一生生きるんじゃないかって感じがあるじゃないですか。なんか死がわかんないというか。
鉛
まあ確かに。いつか死ぬ実感なんてないですよね。
クマ
でも実の姉の骨見たりとか、じいさんの骨見るとああーマジで死ぬんだなって。
悲しいというよりは、燃やすとマジで骨になるんだって。
鉛
なるほど。
クマ
そこからいつか絶対死ぬって考えに切り替わって。中2,3ぐらいの頃から。
鉛
はいはいはい。
クマ
これは常にいつか死ぬ、どうせ死ぬって考えて生きてると、やっぱりなんか嫌なことやってる暇ないなって。
鉛
それはちょっと人生のターニングポイントみたいな感じですね。
クマ
あと、僕去年、一昨年かな。親父が亡くなったんすよ、65で。
鉛
そうなんですね。
クマ
それもあるからやっぱり。で、親父の遺言っていうかメッセージがあって。
鉛
はい。
クマ
「みんなが楽しく生きてくれたらそれでいいです」って書いてあって。楽しく生きた方がいいなと思って、最低限のことだけして。別になんかいい車乗りたいとか、いい服着たいとかないし。まあ服は自分で作れるし。
鉛
うんうんうん。
クマ
だからまあ、好きな格好して楽しい友達と遊んで、ほんとに嫌なことしない。
やんなきゃいけないことはやりますけど。
鉛
はいはいはい。なるほど。
クマ
上手く言えないですけど。……みんないつかマジで死ぬからなと思って生きてますね。
鉛
なるほどです。
クマ
みんな好きに生きてほしいですけどね。
鉛
それは確かに。
クマ
無理するとね、辛いっすからね。
鉛
そうですよね。無理した先に何が待ってるのかっていうね。
クマ
僕も若い時はやっぱ野望もあったから、無理してコイツ合わないなっていう人、名前があるから絡んでたけど、結局今は関わりがないんですよ。
鉛
うんうん。
クマ
今は別にね、粗相をしても許してくれる人としか絡んでないから。
鉛
なるほど。
──漬物の工場をみつける
鉛
ろばた漬け
クマ
いいっすね。このオリジナルフォントとかいいですね。adobe(デザイン・クリエイティブ系ソフトの大手メーカー)とかにはないこの感じが。
クマ
(たくさん停まっている子供を載せる座席をつけたママチャリを見て)多分いい会社なんでしょうね、主婦層が多そう。
鉛
確かに、パートなのかな。この桜と看板のコントラストが……
クマ
あ、やってますね。
──漬物直売所に立ち寄る
クマ
めちゃくちゃ安い。
鉛
確かに。卸売価格ぐらいじゃないですか。ほぼ。
クマ
普通に安い。メロン醤油漬け!?
鉛
メロン!!2個500円はすごい。
──店内で漬物を買う二人
鉛
メロン食べたかったな。要冷蔵だったからなぁ。
クマ
人気ナンバー1でしたもんね。まあ今度通販で。
鉛
たぶんそこまではしないと思う(笑)。
鉛
以前に聞いたんですけど、最高の1杯とか、今自分が最強かもみたいなシーンについて聞きたい。でも基本飲酒でしたよね。
クマ
僕は基本的に1人で飲むよりかは、やっぱ友達2人とか複数人と飲むのが結構好きで。
鉛
はいはい。
クマ
やっぱりおしゃべりの潤滑剤的なお酒の役割が強い。
鉛
なるほど。
学生時代の話
休み時間にこう、イキりのためにBURSTを開いてて
クマ
元々僕中高全然友達いなくて、全員死ねって思いながら寝てて。机に突っ伏してましたね休み時間。で、なんか陽キャ達が消しゴム投げこむみたいなくだらないことして。
今だったら僕も参加したいですけど(笑)。それで、僕にたまたま当たっちゃった時に、「やべ、クマザワくんにあたっちゃった」って言われた時に、「あいつ急に暴れて刺してくんじゃない(笑)?」って(机に突っ伏しながらそう言われてたことを)聞いてたっすね。
鉛
えー、そういうポジションだった。
クマ
そうそう、陰キャで。
鉛
そういう感じか。
クマ
僕の友達とかはみんな、「あいつらって石ひっくり返したらわーって暴れるダンゴムシみたいだよね」って言われてて、普通に面と向かって。だから全員死ねって思ってた。
鉛
へー。じゃ、スクールカーストが低いですね?
クマ
低いですね。でもね、今思うと低い方にわざとやってたんですよ。
鉛
なるほど。あいつらとつるみたくないみたいな。
クマ
休み時間にこう、イキりのためにBURST(2000年代にあった身体改造、死体、マリファナ、ハードコア等を取り扱う伝説的なアングラ雑誌)を開いてて。
鉛
いや、そこがやっぱ東京なんだよな。自分の田舎にBURST読んでるやつさすがにいなかったっすね。
クマ
身体改造の記事とか読んでて。で、ちょっとピアスとか好きそうな女の子が話しかけてきて「クマザワくんピアスとか好きなん?」って言われて。で、僕イキって「いや、ピアスは開いてないけどさ、身体改造に興味あるんだよね。」って答えちゃって。スカリ……
鉛
あ、スカリフィケーション(医療用メスなどで皮膚を切り取り皮膚が再生する時にできるケロイド状態で模様を描く改造)!!
クマ
とか、埋め込むインプ……
鉛
インプラントね(体内にシリコンなどの異物を埋め込む改造)!!
クマ
スプリットタン(舌を縦半分に切り蛇状の舌にする改造)とかの方がいいんだよねとか言ってたら、「そっかぁ……」って言われちゃって。モテチャンス逃した。1軍に話しかけられたのに。
鉛
なるほど。尖りすぎたがために。
クマ
イキりなんすよ、尖りたくなかったのに。
鉛
でもそこでやっぱBURSTが出てくるのがカルチャーしてるなって思いますね。田舎の人間からすると。いや、もちろんBURST読んでるのは周りにいたっすけど、やっぱ同世代にはいなくて。結局バンドをやった繋がりで、当然その界隈はBURST読んでるけど、やっぱ同級生でBURST読んでる人いなかったっすね。
クマ
BURSTとか。あと「TOKYO TRIBE」って漫画がかっこよくて(93年に出版された井上三太の漫画。ストリートギャングの抗争を過激で過剰に描く青春漫画)、町田も舞台だったんですよ。作者が町田出身で。
あとなんか中学生の当時古谷実が流行って「僕といっしょ」を読んでたんですけど(97年週刊ヤングマガジンに連載されていた古谷実の漫画。家出をした中学生と小学生の兄弟の東京での居候生活を描くギャグ漫画)。今だったらなんも思わないなんかちょっとSMのシーンみたいなのがあって。
鉛
はいはい。
クマ
中2っすよ。女子に見られたらおしまいじゃないですか、その頃って。
鉛
はいはいはい。
クマ
それが女子にバレてほぼ終わります(笑)。
鉛
えええー。
クマ
「みんなー、クマザワがエロい漫画読んでるー」って言われて。やめてくれーって。
でも逆にヤンキーに好かれてましたね。クマザワはエロいこと知ってんじゃんって。
鉛
ヤンキーがいる学校だったんすね。なるほど。
クマ
下の世代の子とかはなんか廊下で爆竹したりとか、原付で走ったりとか。
鉛
はいはいはい。そうか、まだその世代なんすね。
クマ
いや、僕の学校だけでしたけどね。その学校が地元じゃ最悪な学校でしたね。僕はそこのダンゴムシでした(笑)。同級生がもうなんかヤンキーのピラミッドの上の方にいたんですけど。
鉛
そういう人たちらはみんなもう卒業して反社とかヤクザとかですか?
クマ
反社かヤクザか、中学出て普通に職人さんで今割と上の方にいますね。
鉛
職人。じゃあ割と真面目な。
クマ
割とそうですね。僕の地元は割り切ってて。反社行くよりは職人さんとかガテン系にいく人が多かった。
鉛
じゃあ治安がいい方ですね。なんか昔、新宿区出身の人と話したけど小学生のとき一緒に遊戯王カードで遊んでた同級生が大人になったらシャブで捕まったとか。ほかの同級生は今特殊詐欺のリーダーやっててみたいな。あっ、さすが新宿と思って。なるほどじゃあ町田はちゃんと地に足がついてる。
クマ
鉛さんの地元の新潟はどんな感じだったんですか?
鉛
うちの学校は1人もヤンキーなくて。でも4個上の姉がいるんすけどその頃はまだ治安がちょっと悪かった。学校であまりにもみんな暴れるから、警察来たりとか。4つ5つ上の世代は結構やんちゃでしたね新潟県全域。それこそなんか窓から机投げたりとかそういう世代だけど、自分の世代はほんとにヤンキーいなかったし、高校は進学校だったからそもそもグレてるやつ1人もいない。ギャルすらほぼいないみたいな、ほんと1人2人だけいたみたいな。
クマ
高校は僕もいなくて、中学校だけヤンキーがいて。
鉛
へぇー。
クマ
当時なんか町田って黒人がすごい多くて。で、街中歩いてるとSUPREME(赤いボックスロゴが有名なアメリカのストリート系ブランド)とか買わない?って聞かれて。もちろん偽物ですけど。で、僕も当時はそういう(ストリート系の)格好してたから、1回試しに買ってみたんですよ、まあ思いっきり偽物なんですけど。
鉛
なるほど。
クマ
僕も当時陰キャのくせにキングギドラ(Kダブシャイン、Zeebra、DJ OASISからなる日本のレジェンド的なヒップホップグループ)とか聴いてたから。
鉛
はいはい。
クマ
で、見つかってヤンキーに「何PELLE PELLE着てんだよクマザワ」って。で「いや、これ偽物っすよこれ」って言い逃れしようとしてた。
鉛
なるほど。自分がそういうヤンキーに関わった経験がないからなぁ。
だからなんか漫画とか読んだ方がいいっす(笑)。
クマ
中学の同級生のギャルの子は町田のゲーセンの前でおっさんから親父狩りしたり。同級生の男の子は黒人の店の店員をなんかボコボコにしたみたいな。
鉛
まだそういうカルチャーの残る。
クマ
そういう街でしたね。で、小学校の時の友達がヤンキーになっちゃって。Oくんって言うんですけど。中学上がったときにその同級生のOくんと地元の話してて、「昔一緒に駄菓子屋行ったよね」とか言ってたら、いきなり俺知らない人に蹴飛ばされて吹っ飛んで。「痛った!」って思ったんですよ。
そしたら身長180cmぐらいのヤンキーに蹴られたみたいで。「Oくんこんなダサ坊となに話してんの?」って言われて。そしたらOくん「小学校時代の連れ〜」って言って。そしたらその180cmのヤンキー「あっそう、じゃあごめんねー」って言われて。逆に僕もごめんって謝ったんですけど(笑)。そこで反抗するとやられちゃうから。
鉛
怖っ。いや、180cmのヤンキーに反抗する気になれないわ。
クマ
そこで今のちょける技術身につけたのかもしれない。
鉛
あー、怖いっすねヤンキー。
クマ
僕のこといじめてくるなんかヤンキーと陰キャの間みたいなダサいやつがいたんすけど。おしゃれじゃないヤンキーみたいな。
鉛
はいはい。
クマ
で、僕のことを好きなヤンキーがいて。なんか漫画の話とかすごい合う子で。僕がちょっと漫画のこと教えてあげてたんで。
鉛
はい。
クマ
そしたら僕がそのダサい方のヤンキーに絡まれたら、(仲のいい方のヤンキーが)そいつにいきなりドロップキックして「テメェ、なにやってんだよクマザワに手だしてんじゃねぇよ」ってボコボコにしてて。
クマ
僕はやりすぎだよぉって言ったんだけど、次の日からその子不登校になっちゃって。ダサい方のヤンキーは小学校の時トップのヤンキーだったんですけど中学の洗礼を受けて。で、仲のいい方の子はバスケ部だし、めっちゃイケメンで勉強できるヤンキーで結局進学校とか行ってるんで。
鉛
なるほど。
クマ
うん、そういうヤンキー。オールマイティでめちゃめちゃモテるんです、常に女がいて。
鉛
あー。
クマ
で、その子になんか僕は好かれてきた。
鉛
へえー。
クマ
「クマから聞いたあの漫画もめっちゃ面白かった。浦安何だっけ?」
「あっ、浦安鉄筋家族っすね。」みたいな。
鉛
なるほどね。
クマ
僕全巻持ってるんで貸しますよって言って、ありがとうって言って当然返ってこないんですけどね。でもなんかそういう処世術でした。
鉛
へえ。でもなんか想像つくな。そういう強い人とは仲いいみたいな。
クマ
トップのヤンキーには僕いじめられなくなったんですよ。○○の友達のクマザワでしょって。
鉛
はいはいはい。
クマ
だからなんか漫画とか読んだ方がいいっす(笑)。
鉛
でも、割とバンドマンってそのポジションにいるっていうか。なんか1軍でゴリゴリのヤンキーみたいなバンドマンって、ジャンルにもよるかもしんないけど、(我々の周りには)あんまいないっすよね。基本みんなオタクだし、陰キャだし。
クマ
なんか鬱屈してる。
鉛
そうそう。陰キャだけどなぜかそういうコネを持ってるみたいな。なぜか権力者とは仲がいいオタクみたいな、そういうポジションを獲がちですよね。
クマ
あ、歩飲の話に戻りますけど、なんか歩飲の方がちょっと本音が話しやすいかも。
鉛
やっぱ歩いてるからこそ。
クマ
周りの人たちもなんか通り過ぎていくから。
鉛
うんうん。それは絶対あると思うっすね。
クマ
なんかほんと外を歩いているから誰も聞いてないし。
鉛
そうそうそう、確かにね。
クマ
結構昔のドラマって、喫茶店でめちゃくちゃヤバめの話とかしてるシーンあるじゃないですか。バレちゃうじゃんって思って観てたんですけど(笑)。歩いてればバレない。
鉛
喫茶店はほんと誰に聞かれてるかわかんないから、めちゃめちゃそれ社外秘じゃないの?みたいな情報をパソコンに映していたりね。
クマ
歩飲は不思議なカルチャーだなって。歩いてるから泥酔できないのでやらかしたりみたいな変な事件になりにくい。
鉛
ある程度そう。理性も保たれる。最低限歩ける理性は保ってないとできないから。
クマ
結果座飲(座ってお酒を飲む行為)になって迷惑かけることはあるんだけど、歩飲中は迷惑かけなくて済む。
鉛
まあある程度話聞けたのでそろそろ切り上げますか?
クマ
そうしましょう。ジャス亭(いまたまたま目の前にある中華料理屋、「ジャスミン亭」)でランチして終わりますか?

鉛
そうしましょう。ジャスミン亭いい名前ですね。なんか居抜きっぽい佇まいですね。
クマ
あ、でも結構老舗っぽいですよ。(看板に書いてある)電話番号的に。
鉛
確かに。じゃ居抜きじゃないんだ……
お店を見つけるたび、これは居抜きか?土地持ちの家の倅が実家に戻って来て始めた店なんじゃないかと?永遠とどうでもいい妄想をする二人であった。
TOSHIKI KUMAZAWA氏がやっているアパレルブランドHYPNOTIC VOID.